ご自宅でパンを作る際には、パン作りの道具をそろえる必要があります。
家庭のキッチンでも、さまざまなバリエーションのパンを作ることができるので、パン作りの工程を踏まえつつ、特にパン作り初心者の方向けに、まずはこれだけ、というパン作りの必須アイテムについてご紹介いたします。基本の道具をおさえれば、魅力的なオリジナルのパンをお作りいただけます。

シェフパティシエ 中村 和史

1986年ホテルオークラ東京入社。
デリカテッセンに並ぶペストリーのほか、レストランやご宴会・ウエディングなど館内で提供される洋菓子全般を担当。
シェフパティシエ就任後は「伝統と革新」をテーマに、お客様に喜ばれる洋菓子を提供すべく、日々研鑽を重ねている。


パン作りの工程

パン作りの道具を知るためには、まずパン作りの工程について簡単に理解をしておきましょう。

材料を計量する

最初に必要な材料(小麦粉、塩、イースト、水、卵など)を準備し、正確に計量します。
分量が間違っていたり、測り方がアバウトだったりした場合、生地がうまく混ざらない場合がありますので、正しい計量が非常に重要なポイントです。

生地をこねる

パン生地を作業台でこねます。体重を乗せて、台の上でこすりつけるように混ぜると、生地に粘りや弾力が出やすくなります。

生地を発酵させる

生地をこねた後に、一次発酵と二次発酵(成形後)の2回発酵するのが一般的です。
生地を発酵させると、ガスが内側に溜まり、パン生地がふっくらと膨らみます。

生地を成形する

丸めたり、型に入れたりするなどして、パン生地を作りたい形に成形します。パン生地を焼くと生地が膨らむので、膨らむことを見越して成形するのがポイントです。

焼成する

最後に生地を焼成します。ポイントは、正確な時間と温度です。
オーブンをあらかじめ予熱で温めておき、作るパンに合わせて焼成時間をセットしてください。

パン作りに使用する主な道具

軽量に必要な道具

・スケール

材料を正確に測るために不可欠なのが、スケールです。0.1g単位まで対応したデジタルスケールがおすすめです。イーストは少量の違いで発酵具合やスピードに大きな差が生じるので、特に正確に測ってください。

・軽量カップ

水や牛乳の計測には透明の計量カップを使用します。ご家庭にあるもので十分です。ただし、より正確に計量するためにはデジタルスケールを用いた方が確実です。

・軽量スプーン

イースト、砂糖、塩などを計測する際に使用します。深くて、口の狭いスプーンを使用すると、すり切りがしっかりでき、正確に計量できます。

・温度計

正確な温度を測るためには、デジタルの温度計を使用します。季節によって、水や粉の温度が変化するので、温度計を用いてレシピ通りに温度を管理します。

生地を作るために必要な道具

・ボウル

生地を混ぜ合わせたり、イーストを溶かしたりする際に小さめのボウルを使用します。

・布巾

パン生地が乾燥してしまわないように、成形中などに濡らした布巾をかけます。家庭用のものや100円ショップで売っているもので十分です。厚手の生地のものだとしっかり絞ってもベタベタくっついてしまうので注意してください。

成形に必要な道具

・ペストリーボード

ペストリーボードとは、パンをこねるときに使用する板のことです。パンこね台ともいいます。木製、シリコン、プラスチック、大理石など素材によって特徴が異なります。より手軽なパンこねマットも販売されています。

・カード(ドレッジ・スケッパー)

カードは生地の分割や手・台・ボウルなどについた生地をそぎ取るのに使用する器具です。生地の分割は包丁で代用しても良いですが、ボウルの底の生地をそぎ取るにはカードが便利です。

・ラップ

パン生地を発酵させる際に、乾燥から守るためにラップを使用します。

焼成に必要な道具

・オーブン

パンの焼成に使用します。ご家庭用のオーブンレンジで問題ありません。

・焼成紙

パンを焼成する際に、生地が皿やトレイにくっついてしまわないように、焼成紙を使用します。

・ケーキクーラー

オーブンで焼いたパンを冷ます際に使用する網をケーキクーラー(ケーキラック)といいます。焼きあがったばかりのパンは熱すぎて冷蔵庫に入れることができないため、ケーキクーラーに乗せて冷まします。

パン作りの際にあると便利な道具

成形型

型は形の決まったパンを作る際に便利です。食パン型やイングリッシュマフィン型などさまざまな型があるので、使用用途に応じてお選びください。

めん棒

デニッシュ生地など生地を伸ばす必要のあるパンを作る際に便利で、生地を薄く均等に伸ばす際に使用します。クッキーなどのお菓子作りの際にもあると便利な道具です。

霧吹き

焼成時などに霧吹きで水分を吹きかけると、パリッとした焼き上がりになります。主にフランスパンなどのハードなパンを作るときに使用します。

コルプ型

コルプ型とは、カンパーニュなどのパンを発酵させる時に便利なかごです。クープナイフやカミソリで模様をつけなくても、かごの模様がきれいな縞模様となってパンに移ります。

手軽に、本格的に楽しめるパン作り

基本はパンの配合を守る事で、正確に測れるスケールが重要です。正確な分量を用意出来たら次はこねる作業です。こねる作業では力加減に気を付ける事がポイントです。生地の温度、粘り気、弾力など掌で感じて生地の状態を確認し、十分なグルテンを形成します。生地を作る際は、ペストリーボードやマーブル台に生地をのせ「打ち粉」を撒き、生地を丸めたり、めん棒を使って伸ばしたり形成します。生地が出来上がった後は、紹介した道具を使い、成形、発酵、焼成します。

ご家庭では卓上のミキサーを使い、フックと呼ばれるものでこねると簡単にできます。
今回紹介したように、一通りの道具をそろえる必要はありますが、ご家庭にあるもので比較的手軽にそろえやすいものが多いと思います。道具が揃ったら好みの形に成形してみるなど、より手軽にパン作りを愉しみ趣味の幅を広げてみてはいかがでしょうか。

パン作りの醍醐味とは

パン作りのレシピはいくつもあると思いますが、言葉で表現されない部分が多く、手で生地をこねる場合などは特に難しく感じると思います。力加減などは人によって様々であり、何分こねるなど時間で表すことは特に難しいです。同じ風に仕込んだつもりなのに、なぜか前回とは違う焼き上がりになってしまうことはよくあることです。しかしそれでいいのです。これこそがパン作りの醍醐味のように私は思います。焼けたパンを楽しく食べて、今度作るときはここをこうやってみよう、とか思いながら次に活かすようにまたチャレンジしてください。
そして思い通り焼き上がったときの嬉しさと美味しさは格別です。ぜひ味わってみてください。

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