ケーキ作りが大成功するか失敗してしまうかのポイントの一つに型の選び方があります。ケーキの焼き型にはさまざまな形や素材があり、用途に合わせて最適なものを使い分けることで、焼き色の良さや焼き上がりのムラ、手入れのしやすさなどが変わってきます。今回はケーキ型の主な素材と選び方、お手入れ方法をご紹介いたします。ぜひ、ご家庭でケーキ作りをする際の型選びの参考にしてください。

シェフパティシエ 中村 和史

1986年ホテルオークラ東京入社。
デリカテッセンに並ぶペストリーのほか、レストランやご宴会・ウエディングなど館内で提供される洋菓子全般を担当。
シェフパティシエ就任後は「伝統と革新」をテーマに、お客様に喜ばれる洋菓子を提供すべく、日々研鑽を重ねている。


ケーキ型に使われる主な素材

ステンレス製(セルクルリング)

ステンレス製の型のメリットは、酸に強く錆びにくいことです。また、抗菌性もあるため手入れが非常に楽です。熱伝導率が低い(熱が伝わりにくく、保温性が高い)ので、冷菓に向いています。
型をはめたままオーブンで焼成をする際は、生地が離れにくいので焼成紙を使って焼くと良いでしょう。

ブリキ製

ブリキ製の型のメリットは、熱伝導率が高いため、焼き上げた時にきれいなきつね色が付きやすいことです。また、値段が比較的安いこともメリットです。焼き菓子作り全般に向いています。
水分に弱く、空気中の湿気で錆びることもある点に注意が必要です。使用後の水気の拭き取りや保管場所などは十分に注意しましょう。

アルミ製

アルミ製は熱伝導率が高く(熱がしっかり伝わるので焼き時間を調整しやすく、焼きあがった生地がきれいに型から外せる)、焦げ付きにくいのが特徴です。錆びにくく軽くて扱いやすいので、使い勝手がよく、手入れもお手軽です。さらに焦げにくくするために、フッ素加工(テフロン加工)を施したものもあります。
弱点としては衝撃に弱いことです。また、洗う時に金たわしなどを使用すると加工がとれてしまうこともあります。

シリコン製

シリコン製の型の特徴は、電子レンジとオーブンの両方で使用できることです。焼き菓子、チョコレート、冷凍スイーツまで幅広く活用できます。柔らかいので、生地を型から離す際にも便利です。汚れも落ちやすいので、手入れが簡単です。

アルタイト(アルスター)製

アルタイトは、鉄の素材にアルミコーティングを施した型です。熱伝導率の高さ、型離れの良さ、頑丈さといった、アルミと鉄の良いところの両方を取り入れた素材です。
注意点は、鉄なのでやや重みがあること、コーティングされているものの中身は鉄なので手入れをきちんとしないと錆びてしまうことです。

耐熱ガラス製

耐熱ガラスは、加熱にも冷却にも対応している万能タイプの型です。透明なので調理中に生地の状態を目視で確認できるメリットがあります。しかし、金属に比べると熱伝導率は劣ります。


ケーキ型の種類とサイズの選び方

ケーキ型の主な種類

・パウンドケーキ型
パウンドケーキを焼く際に使用する長方形のケーキ型です。そもそもパウンドケーキは、砂糖、小麦粉、卵をそれぞれ1ポンド(約450g)ずつ使うことからパウンドケーキ (pound cake) と名付けられました。
パウンド型を選ぶときには、中まで火が通りやすいブリキ製がおすすめです。パウンドケーキだけではなく、カステラやパンを焼くときにも使用できます。

・スポンジケーキ型
スポンジケーキ型とは、主にデコレーションケーキの土台となるスポンジケーキに使用する型のことです。
スポンジ生地もパウンドケーキと同じくきれいな焼き色を付けたいので、最もオススメはブリキ型やアルミ型です。
チーズケーキなど、さまざまなケーキや洋菓子作りに応用できます。

・シフォンケーキ型
中央に空洞があるタイプのシフォン型。ふわふわでしっとりした食感のシフォンケーキを焼くには、熱伝導率が高く表面加工がないアルミ製がオススメです。型に生地がしっかりとくっつくので、焼き縮みを防ぐことができます。

・マドレーヌ型
マドレーヌ型は、貝殻やハートなどさまざまな形のものが販売されていて、バリエーション豊かな小型のケーキ、お菓子作りができます。カリッとした焼き上がりに仕上げたい場合は鉄製やブリキ型、お手入れを手軽に済ませたい方はシリコン製がオススメです。

・タルト型
タルト型は丸形のものが多く、他の型よりも深さが浅いのが特徴です。
タルト型は、底面が外せるタイプのものがオススメです。他に、キッシュやパイを作ることもできます。

ケーキ型のサイズの選び方

ケーキ型はサイズにも注意したいところです。作りたい大きさに合わせて型を選ぶ必要があります。型のサイズと人数の目安は以下の通りです。

3号:直径9cm(およそ1~2人分)
4号:直径12cm(およそ2~4人分)
5号:直径15cm(およそ4~6人分)
6号:直径18cm(およそ6~8人分)
7号:直径21cm(およそ8~10人分)
8号:直径24cm(およそ10~12人分)


ケーキ型のお手入れ方法

基本的なケーキ型のお手入れ方法

(使用前)
中性洗剤をつけた柔らかいスポンジで洗い、水分を十分に拭き取ります。
※初めて型を使用する際に、空焼きが必要な材質もあるので、事前にチェックしておきましょう。
空焼きとはオーブンに型だけを入れて焼くことで、型の耐久性向上・油なじみが良くなるといったメリットがあります。

(使用時)
ショートニング(またはサラダ油)をケーキ型に薄く塗ります。上から粉をはたき生地を流し込みます。そうすることで、焼き上がりの際に生地がきれいに取れます。シリコン製など材質によっては、ショートニングを塗らなくても良いものもあります。

(使用後)
中性洗剤をつけた柔らかいスポンジで洗い、水気をキレイに拭き取ります。水気をしっかり拭き取ったら、乾燥させてから保管するようにしましょう。

ケーキ型を錆びさせない工夫

錆びてしまうとケーキ型は台無しになってしまいます。錆びさせないための工夫についてご紹介いたします。

・ケーキ型を洗い終わった後は、水気を十分に拭き取ること
・熱の残ったオーブンに入れて乾燥させ水気を飛ばすこと
・長期間使用せずに保存する際は、オーブンで乾燥させた後にキッチンペーパーなどで食用油を薄く伸ばすこと
(そのまま保管しておくと、空気中の湿度で錆びてしまうことがあるため)

その後、ビニール袋に入れて保存すると良いでしょう。


型をうまく選んでケーキ作りをさらに楽しく

ケーキの型一つを取っても、素材や形状、特徴はさまざまです。だからこそ、きちんと用途に合った型を選ぶことで、ワンランク上の洋菓子作りを愉しむことができます。
また、型を使うときに重要なポイントは、お手入れの方法です。使用前、使用時、使用後と、それぞれの保管方法がありますので型が錆びてしまわないように注意が必要です。材質ごとに保管方法も少しずつ異なりますので、それぞれの材質に合った保管方法をチェックしておきましょう。
業務として型を扱う場合は、使用頻度が違うため一度毎に洗剤で洗わず、せっかく馴染んだ油分を残しつつ、食材の付着などを落としておく程度になります。
ご家庭では、使用せずしまって置く際に、油が酸化して匂いが出るのを避けるため、きちんと油分を取り除きましょう。
ムラのないきれいな焼き上がりのケーキを作るためにも、型選びも意識してケーキ作りを愉しんでみてください。

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