R.M.とN.M.のシャンパーニュメゾンの違い
高品質なスパークリングワインを産出するフランス シャンパーニュ。“Moët et Chandon”、“Pommery”、“Veuve Clicquot”、“Krug”、“Egly Ouriet”、“Jacques Selosse”といった多くのシャンパーニュメゾンが存在しますが、ここに挙げたメゾンを2つのグループに分類することができるでしょうか。その答えは、R.M.とN.M.というキーワードで語ることができます。ブドウや味わいの違いではない分類の仕方。これもワインの世界です。
ソムリエ:大出 剛広
A.S.I. Sommelier Diploma(国際ソムリエ協会認定資格)を保有し、多数のソムリエコンクールに入賞経験を持つ。
特定の得意分野がないほど、ワインに関する幅広いジャンルに精通。
シャンパーニュメゾンの種類
一口にシャンパーニュと言っても多種多様で、メゾンによって味わいが異なるのはもちろんのこと、同じメゾンでも味わいの様々な商品を製造しています。一方、味ではなく生産形態でワインメーカーを見てみると、新しい切り口からワインの世界を見ることができます。当然のことですが、世界には数えきれないほどのワインメーカーがあり、それぞれの方法でブドウを栽培、または購入してワインを生産しています。この生産形態を明確に分類して規定しているのがシャンパーニュの特徴でもあります。消費者にとっては分類が分かりやすく、巧みなマーケティングとも言えるかもしれません。主な生産形態は、以下の通りです。
・N.M.(Negociant Manipulant)
ネゴシアン・マニピュラン
ブドウの一部またはすべてを農家から購入し、シャンパーニュを造るメゾン。“Moët et Chandon”、“Pommery”、“Veuve Clicquot”、“Krug”など、大手シャンパーニュメゾンのほとんどがN.M.に属している。
・R.M.(Recoltant Manipulant)
レコルタン・マニピュラン
自社畑のブドウだけでシャンパーニュを造るメゾン。自社でブドウ栽培から製造までを行い、比較的小規模であることが多い。“Egly Ouriet”、“Jacques Selosse”など。
N.M.とR.M.の他にも、C.M.(Coopertative Manipulant:コーペラティヴ・マニピュラン)と呼ばれる生産者協同組合もあります。ブドウ農家が協同組合にブドウを卸し、協同組合が製造を行う形です。または、農家が協同組合を作って組合で生産します。
R.M.の特徴
これまでシャンパーニュというブランドを牽引してきたのは間違いなく大手のN.M.でした。しかし、ここ10年ほどの間、ワイン愛好家の話題の中心はR.M.に移ってきています。ブドウを購入するのが悪いという意味ではありませんが、小さなメゾンであってもブドウを購入することをせず、自分たちが栽培・収穫したブドウだけを使って個性的なワインを造り上げるこうしたR.M.は、栽培から醸造まですべてを自ら手掛けるため、妥協のないワイン造りを行っていると言えるでしょう。それゆえ、出来上がったワインにはブドウが育った畑の環境や、造り手のフィロソフィーが色濃く反映されるのです。
造り手の個性を愉しめるほど消費者のレベルが高い日本のマーケットにおいて、R.M.はすっかり立ち位置を確立しており、大手N.M.と張り合うのではなく、まったくの別路線を歩んでいます。生産量ではなく、はっきりとした個性を持った品質の違いで対抗する。この手法は、シャンパーニュ以外のスパークリングワインメーカーにとって心強いモデルケースでもあります。
N.M.の凄さ
シャンパーニュの製造には、とにかくコストと時間がかかります。いくつもの製造年のワインをブレンドしなければいけない、ブレンド用のワインをストックしておかなければいけない、ボトルに詰められたワインは何年も熟成させなければいけない等々、無理難題のオンパレードです。ワインを熟成させるためのスペースは確保できるか。実際に販売できるまでの収入はどうするのか。生産規模が大きいほど、これらの条件は生産者にとって厳しいものとなります。しかし、少なくとも世界的に著名なN.M.メゾンならば、これらの難しい条件を軽々とクリアしており、それゆえに品質の安定感は抜群です。
オークラが選ぶシャンパーニュ
・“Pommery”
オークラと最も付き合いが長いシャンパーニュメゾン。現代のシャンパーニュの主流である“Brut”(辛口)を生んだメゾンとしても有名。
ピュアでエレガントな味わいと安定した品質は数あるシャンパーニュメゾンの中でも秀逸です。
・“Jacques Selosse”
R.M.ブームの発端はこのドメーヌと言ってほぼ間違いありません。このドメーヌが生産しているどのワインも素晴らしく美味。非常に人気が高く、常に入手困難です。
まとめ
N.M.の安定感とR.M.の個性的な味わいは、一概に優劣をつけられるものではありません。
ワインを愉しまれる状況に応じてN.M.とR.M.を使い分けることができたら、きっとあなたもワイン通です。