「白ワインの女王」シャルドネとは?
お客様に白ワインについて説明をすることがよくありますが、昨今、ブドウ品種を気にされる方が増えていると感じます。しかし、ワインボトルを見てもアルファベットが並んで読みづらく、メーカー名が大きく記載されているかと思えば、「シャルドネ」と記載してあるボトルもあるのでややこしいですよね。
そこで、「白ワインの女王」シャルドネについて詳しくご説明したいと思います。
ソムリエ:平原 誠次
8年間のフランス修行を経て入社。
ブルゴーニュワインや甘口ワインを得意とし、A.S.I. Sommelier Diploma(国際ソムリエ協会認定資格)を取得している。
シャルドネとは
白ワイン用ブドウ品種として世界中で栽培され、全世界でおよそ14万haの栽培面積があるといわれています。原産はフランス・ブルゴーニュ地方で、ピノ・ノワールとグエ・ブランの自然交配品種であることが現在の研究で明らかになっていますが、中世にはすでに多く栽培されていました。石灰質土壌が最も適しており、他の白ブドウ品種より病害に強く、テロワールへの高い適応力が評価されています。
例えば、暖かい地域で育ったシャルドネは、パッションフルーツや熟したパインなどの南国系の甘いフルーツ香がするのに対し、寒い地域や標高が高く涼しい地域のシャルドネはグレープフルーツやりんご(ピンクレディー種)など、シトラス系の爽やかな香りを醸し出します。
現在ではアメリカ、オーストラリア、南アフリカなど各地で栽培面積が広がっています。そのため「ガメイ・ブラン」「ムロン・ド・ブルゴーニュ」「シュペート・ワイス・ブルグンダー」など、シノニム(品種の別名)が多いのもシャルドネの特徴です。
主な産地と土地ごとのシャルドネの特徴
フランス
シャルドネ栽培は国土の東側に集中しており、シャンパーニュ地方、ブルゴーニュ地方、ジュラ・サヴォア地方や、ロワール川流域等のフランス中央部などの、大陸性気候の冷涼で湿度が低い地方で栽培されています。また、南部のラングドック地方やフランス南西部では、ヴァンドペイ(地酒)に多く利用されています。シャンパーニュ地方ではシャルドネから豊かな酸味のきいた発泡性ワインが、ジュラ・サヴォア地方では木の実のような風味を持つ独特なニュアンスを持つワインが生産されています。
イタリア
ほとんどの州でシャルドネを栽培しています。自国愛が強いイタリアの国民性のためか、シャルドネは補助品種として用いられるケースが多くみられます。
また、ロンバルディア州ではフランチャコルタ(発泡性ワイン)の原料として用いられています。
アメリカ
カリフォルニアの中でも、海に近い地域がシャルドネ栽培に適しており、この地域の白ブドウでは最も多く栽培されています。
ソノマ・カウンティは赤ワインで有名なナパ・ヴァレーより海沿いにある地域で、太平洋からの冷風により朝晩が冷涼になるため、ナパ・ヴァレーよりシャルドネ栽培に向いた気候です。
チリ
典型的な地中海性気候で雨が少なく、乾燥した状態が長く続くチリでは、ソーヴィニヨン・ブランに次いで生産量が多い品種です。
海岸沿いの「コスタ」と呼ばれる地域で多く栽培されており、土壌にも海洋性要素を多く含んでいるため、ワインにも塩味やミネラルを感じさせます。日照量が多いため、トロピカルなタッチが特徴です。
オーストラリア
国土が非常に広大な国ですが、ブドウ栽培地はその南側に多く分布しています。シャルドネは白ワイン用ブドウ品種としては最も生産量が多く、その人気の高さがうかがえます。歴史は長くありませんが、個性的なワインを生産する小規模生産者が多いのも特徴です。
シャルドネ品種を使ったおすすめワイン
1. ムルソー プルミエクリュ ジュヌヴリエール フランソワ・ミクルスキ
ムルソーはフランス・ブルゴーニュを代表する、白ワインを多く生産する村です。フランソワ・ミクルスキは、ムルソーで名声を誇るドメーヌ。はつらつとして、骨太でモダンなスタイルのブルゴーニュ・ブランです。
合わせる料理は「ジャンボン・ペルシエ(ハムのゼリー寄せ パセリ風味)」が好相性です。
2. マ・ベル・フォイユ ピーター・マイケル・ワイナリー
イギリス人のピーター・マイケル氏により、カリフォルニアのソノマ・カウンティに創設された若いワイナリー。彼の作るシャルドネはカリフォルニアでも五本の指に数えられるほど。
ボリュームのあるこのワインには、シーフードを贅沢に使った一品「ロブスター・ロール」を。ロブスターをバターとにんにくとともに軽く火を通し、レモンと黒胡椒でざっくり味付けして、ホットドッグのパンに挟み、豪快にいただくのがおすすめです。
3. エラスリス マックス・レゼルヴァ シャルドネ
チリの名門ワイナリーであるエラスリスはアコンカグア・ヴァレーに居を構え、丁寧なワイン生産に定評があります。繊細なミネラルと酸のバランスが良く、しかもコストパフォーマンスが高い一本。
カジュアルなシャルドネに合わせるのは「セビーチェ」がいいでしょう。魚介の骨を取り除きレモンと玉ねぎ、ハーブで和え、オリーブオイルで香り付けした大衆料理がよく合います。
4. 都農ワイン シャルドネ
都農ワインは宮崎県にできた若いワイナリー。火山灰土壌で一見するとブドウ栽培に不向きな土地ですが、この地ならではの日照量を活かし、地元のブドウのみでワイン生産を行っています。
尾鈴豚を使った「シュークルート」をシャルドネと合わせてはいかがでしょう。いわば「洋風おでん」といった料理ですが、キャベツの酢漬けを合わせるのがポイントです。
まとめ
世界各地で栽培されている国際品種となったシャルドネ。テロワールが変われば味わいも変わるのは、ワインの愉しみであり、深い部分でもあります。生産者によって、味も価格も、ワインの「格」までも違いとしてはっきり出る品種は他にそうそうありません。
ワインというと難しく捉えられがちですが、小難しいことは抜きにして、バラエティー豊かなシャルドネワインを一度味わってみてはいかがでしょうか。