今日、ワインの世界におけるキーワードは、Versatility(多様性)とAlternative(これまでと違うアプローチ)です。従来のトレンドであったシャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンなどのインターナショナルなブドウ品種に代わって今まであまり注目されてこなかった品種に光が当たっています。今回ご紹介するシュナン・ブラン(Chenin Blanc)もその一つです。
フランスでは1300年近くにも渡って栽培されているこの品種は、ワインラバーの間では知られているかもしれませんが、一般的な消費者の間での知名度はいま一つです。多様性という言葉を説明する際に、これほど適した品種はないといえるくらいにバラエティーに富んだ味わいを生み出すシュナン・ブランはワイン業界のホットトピックと言えるでしょう。これからますます注目されることが目に見えているこの品種を紐解いていきましょう。

ソムリエ:大出 剛広

A.S.I. Sommelier Diploma(国際ソムリエ協会認定資格)を保有し、多数のソムリエコンクールに入賞経験を持つ。
特定の得意分野がないほど、ワインに関する幅広いジャンルに精通。


シュナン・ブランの特徴

シュナン・ブランはフランス北西部、ロワール地方原産の白ブドウです。芽吹きが早く、熟すのが遅いこの品種は温度の低い生産地では常に霜の危険にさらされています。収穫されたブドウは熟しても高いレベルの酸度を保ち、様々なスタイルのワインを生み出します。辛口の白ワインに始まり、完熟させたブドウから造る甘口、貴腐菌の影響をうけた違うタイプの甘口、さらにはライトボディからフルボディまで存在するハチミツのようなフレーバーをもつスパークリングなど様々あり、いずれも高い酸味が特徴と言えます。これだけのバラエティーをもつということはすなわち醸造方法もいろいろなものがシュナン・ブランにはあるということです。そういった点ではシャルドネと似ているかもしれません。

シュナン・ブランの首都と言えば、原産地であるロワール・ヴァレーです。ここではシュナン・ブランの見本市とでも言えるくらい、数々のスタイルのワインを生産しています。具体的には、完熟したブドウから辛口から甘口まで幅広い味わいのアンジュエリア(Anjou)のサヴニエール(Savennières)や、辛口から甘口とさらに泡まで生産している、トゥーレーヌ(Touraine)のヴーヴレイ(Vouvray)があります。このふたつのエリアで造られるスパークリングのクレマン・ド・ロワ(Crémant de Loire)も多くのワインはシュナン・ブランがベースになっています。世界的に有名な貴腐ワインにカール・ド・ショーム(Quarts de Chaume)やボンヌゾー(Bonnezeaux)がありますが、これらもシュナン・ブランから造られています。焼きリンゴや桃、カリンのフレーバーを持ったこれらのワインは数十年と熟成が可能です。

カリフォルニアではフランスを上回る量のシュナン・ブランを栽培していますが、ほとんどは低価格ワインのブレンドに使われています。またアルゼンチンでもかなりの量を栽培しており、シャルドネやトロンテスとのブレンドに使われています。いずれもシュナン・ブランが前面に出てくることはありません。しかし、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランやアルゼンチンのマルベックのように、シュナン・ブランもしっかりとニューワールドに根を張っています。
注目する産地は南アフリカで、南アフリカ国内では最も植えられている品種です。これから先、赤ワインが主体になっていくだろうと言われる南アフリカですが、今は白ワイン、シュナン・ブランが主体です。南アフリカにおいて100年以上の歴史があるシュナン・ブランはその生産性と暑くても高い酸度を確保できる特性から、瞬く間に生産者の間で人気となりました。以前はブランデーやバルクワインの原料として使われてきましたが、現在は高貴品種としてクオリティーワインへとシフトしています。古木が植えられているステレンボッシュ(Stellnbosch)やスワートランド(Swartland)では、濃縮感あるリッチな味わいのワインが造られています。良く出来たワインは熟成のポテンシャルがあり、今やワールドクラスです。フランスにはあまりない樽熟成タイプのシュナン・ブランも南アフリカの存在を際立たせます。そしてあるメディアは
“It's time to know Chenin Blanc, especially those from South Africa.“と表現しています。

おすすめのシュナン・ブラン

銘柄 :

Boschendal Rachel's Chenin Blanc
ボッシェンダル レイチェルズ シュナン・ブラン

パッションフルーツやマンゴーのアロマとハチミツのような香りが特徴的です。
甘いトロピカルフルーツや爽やかなシトラスフルーツのフレーバーがバランスよく口の中に広がり、長い余韻をもたらします。

銘柄 :

Brahms Chenin Blanc
ブラハム シュナン・ブラン

グアバ、シトラス、ハチミツ、オークの香りが感じられます。しっかりとした酸味とフレッシュでフルーティー、同時にコクとボリューム感もあります。なめらかで、程よいオークの風味も心地よく、エレガントなワインです。

シュナン・ブランに合うおすすめ料理

シュナン・ブランのもつ自然で十分な酸、幅広いスタイルとキャラクターは様々な料理を引き立ててくれます。特にクリーム系のソースを使った魚介料理や照り焼きなどの醤油味の料理ともとても相性が良いです。料理との相性を約束してくれるワインはソムリエにとって大事なパートナーであり、食事をされている方にとっても料理の良きパートナーです。
知名度の低さゆえに、もしかすると手を出しづらいワインかもしれませんが、ショップやレストランのワインリストでみつけることがあったらぜひお試しください。シャルドネやソーヴィニョン・ブランももちろん良いですが、それらにはない、新たな発見をあなたに与えてくれるはずです。シュナン・ブラン、オススメのブドウ品種です。


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