ワインの代表的産出国である、フランス。数多くの高級ワインを生み出し、ワインを造る多くの国に影響を与えています。多種多様なブドウから生み出されるワインは、フランスの人々の生活に根付き、地域ごとの特色ある味わいはその土地の料理と見事なハーモニーを奏でています。高級ワインのイメージが強く難しいイメージも持たれがちなフランスワインですが、リーズナブルな物も多く、飲めば飲むほどその多様性に魅せられ、さらにワインを知りたくなることでしょう。

ソムリエ:上原 真

日本ワインに詳しく、ワインアカデミーでは日本ワイン講師も務める。


フランスワインの基礎知識

フランスワインの歴史

フランスのワイン造りは紀元前に遡り、ギリシャ人・ローマ人を経由してマルセイユにもたらされたのち、紀元1世紀にはローヌ川流域、2世紀にはボルドーやブルゴーニュ、3世紀にはロワール、4世紀にはシャンパーニュへと広まっていき、19世紀末に起きたブドウの病害による危機や20世紀初頭にかけての品質のバラつきを乗り越えて、現在の確固たる地位が築かれました。
フランスの気候や土壌はブドウ栽培に適しており、それぞれの地方ごとに適したブドウ品種が栽培され、多種多様な味わいが生み出されています。

フランスワインに使われる主なブドウ品種

・白ワイン用

白ワイン用のブドウ品種として挙げられるものにシャルドネがあります。シャルドネは世界中で栽培されていますが、それは環境への順応性が高く、冷涼な地域から温暖な地域まで、どこでも良質なワインを造ることが出来るうえニュートラルな性質で、産地や生産者による特徴が出やすいブドウだからです。ブルゴーニュやカリフォルニアではシャルドネによる高級ワインが造られています。
リースリングはアルザスを代表するブドウ品種で、冷涼な気候で育まれます。質の高い酸と果実味、ミネラル、甘みに強いアロマが印象的なブドウです。
ソーヴィニヨン・ブランはすっきりとした味わいとハーブのような爽やかな香りを特徴としており、ボルドーではブレンドされ、ロワールでは単一で用いられることも多いブドウ品種です。またロワールでは、はちみつのような甘い香りと引き締まった酸味を特徴とするシュナン・ブランもあります。また、南フランスには、グルナッシュ・ブランがあります。高いアルコール度と低い酸度を特徴として、柑橘類、ハーブ類とスパイスなどの香りを伴っています。

・赤ワイン用

赤ワイン用のブドウ品種の一つにカベルネ・ソーヴィニヨンがあります。タンニンが豊富で渋みが強く、酸味もしっかりと乗っており、ボルドーでは特に長期熟成させることのできる高級赤ワインのメイン品種として用いられ、質の高いワインが生み出されています。 次にメルローはカベルネ・ソーヴィニヨンに比べタンニンが丸くなめらかなニュアンスをもち、ボルドーの左岸や右岸では、メイン品種や補助品種として用いられることが多くなっています。
そして、カベルネ・ソーヴィニヨンと並びフランスの赤ワインを代表するブドウ品種がピノ・ノワールです。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローに比べブドウの粒が大きく皮が薄いため、色がやや薄くタンニンは少なめで、華やかな香りと繊細な酸味を持ち合わせています。また冷涼なエリアでの栽培も行っているのでシャンパーニュ地方でも育てられております。ブルゴーニュでは単一で用いられることが多く、ピノ・ノワールによる最高級ワインが生み出されています。
シラーは力強くスパイシーな味わいを特徴とし、長期熟成にも向くブドウ品種で色が濃いワインが造られます。コート・デュ・ローヌ地方が原産といわれるように、この地ではシラーによる高級ワインが生み出されています。

 

フランスワインの格付け

フランスでは1935年から原産地統制名称法が用いられていましたが、2009年に新規定に変更となり、「AOC」「VDQS」「Vin de Pays」「Vin de Table」の4カテゴリーから「AOP」「IGP」「Vin de France」の3カテゴリーになりました。
AOP(原産地呼保護ワイン)は特定の産地で生産される上級ワインに与えられ、産地や使用されるブドウ品種、醸造方法などが細かく定められています。
IGP(地理的表示保護ワイン)は生産地域を表示することができるテーブルワインに与えられ、指定地域の指定ブドウ品種の使用や最低アルコール度数が定められています。
Vin de France(テーブルワイン)は特定の生産地域の表示がないテーブルワインであり、比較的価格がリーズナブルなワインです。
フランスワインはエチケット*で等級や産地、ヴィンテージなどがわかるようになっています。
*ラベルの事を指します。

フランスの代表的なワイン産地

ボルドー

フランス南西部に位置する温暖な海洋性気候のボルドーは、高級ワインを生みだすシャトーの多い、赤ワインの代表的な産地です。また最高級の貴腐ワインも造られています。
メドック地区とグラーヴ地区からなるボルドー左岸とポムロール地区やサン・テミリオン地区からなるボルドー右岸がボルドーの代表的な産地で、特に5大シャトーを有するメドック地区が有名です。ボルドーで生産されるワインでは、5大シャトーのシャトー・ラフィット・ロスシルド、シャトー・ムートン・ロスシルド、シャトー・ラトゥール、シャトー・オー・ブリオン、シャトー・マルゴーが特に有名です。

ブルゴーニュ

フランス中央東部の南北に長く位置するのがボルドーと双璧をなすブルゴーニュです。ブルゴーニュ最北に位置するシャブリ地区、数多くの高級ワインが生み出されるコート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌからなるコート・ドール、リヨンの北に位置するボージョレ地区から成っています。ブルゴーニュでは単一品種によるワイン造りが行われ、白ワインはシャルドネから、赤ワインはピノ・ノワールから造られています。ボージョレ地区ではガメイによる赤ワイン造りが行われています。白ワインではモンラッシェやコルトン・シャルルマーニュ、赤ワインではロマネ=コンティやシャンベルタンなどが広く知られています。

シャンパーニュ

フランス北東部に位置するシャンパーニュ地方では、冷涼な気候を生かし、伝統的な瓶内二次発酵による最高品質のスパークリングワイン、シャンパーニュが造られています。主要なブドウはシャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエで、コート・デ・ブラン、ヴァレ・ドゥ・ラ・マルヌ、モンターニュ・ドゥ・ランスの3地区から成っています。ルイ・ローデレール クリスタル、ドン・ペリニヨン、ボランジェなど数多くの高級シャンパーニュが存在します。

ロワール

フランス中央部から西部にかけて流れるロワール川沿いにロワール地方があり、大西洋に面した西側は海洋性気候で、中央部の上流では気温差の大きい気候となっています。シュール・リー*という製法でよく造られるミュスカデが有名なペイ・ナンテ地区、ロゼ・ダンジューで有名なアンジュー・ソーミュール地区、シュナン・ブランの美味しいトゥーレーヌ地区、ソーヴィニヨン・ブランを使用したサンセールとプイィ・フュメがよく知られるサントル・ニヴェルネ地区から成っています。
*ブドウの皮をワインにつけてひと冬を越して香りを高める製法です。

アルザス

ヴォージュ山脈の東側、ドイツとの国境沿いに位置するアルザスでは、リースリング、ミュスカ、ゲヴュルツ・トラミネール、ピノ・グリなどがよく使用され、甘口から辛口まで幅広い味わいの白ワインが多く生み出されています。エチケットにブドウ品種が記載されているのが他の地域とは異なる特徴です。トリンバックやヒューゲルといった生産者が特によく知られています。

コート・デュ・ローヌ

フランス南東部のローヌ川沿いに広がるコート・デュ・ローヌは北部と南部に分けられ、北部にはヴィオニエによるコンドリュー、シラーの力強い味わいを特徴としたコート・ロティやエルミタージュ、南部にはグルナッシュなど多くのブドウ品種をブレンドして造られるシャトー・ヌフ・デュ・パプやロゼで有名なタヴェルがあります。

コート・ド・プロヴァンス

フランスの南東部の地中海沿岸にあるプロヴァンス地方に位置します。中央部から東部、マルセイユとニースの間に広がるワインの産地は多くのA.O.Pがあります。ここはロゼワインが有名でフランス最大のロゼ産地です。

おすすめのフランスワインとおいしい飲み方

Egly Ouriet Brut Tradition
エグリ ウーリエ ブリュット トラディション

  • 産地 :
    シャンパーニュ地方 アンボネイ村 モンターニュ・ランス地区
  • 特徴 :
    輝きのあるイエローに豊かなアロマと複雑でコクのある香りを感じ、美しいシャープな酸とクリーミーな骨格が全体を表現しているバランスの良く取れたシャンパーニュです。
  • おいしい飲み方 :
    良く冷やしてフルートシャンパーニュグラスで飲んでも良いですが、香りを楽しめるような中ぐらいのワイングラスで温度を上げて飲んでいただきたいです。温度は8~10℃がおすすめです。
  • 合わせたい料理 :
    フレッシュキャビアやスモークサーモン、舌平目のグラタン“ボンファム”やバンバンジー、蝦夷鮑のクリーム煮など。

Vougeot Blanc Clos du Prieure 2015 Domaine de la Vougeraie
ヴージョ クロ デュ プリウール 2015 ドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレー

  • 産地 :
    ブルゴーニュ・コート・ド・ニュイ ヴージョ モノポール(単一所有)
  • 特徴 :
    照り輝きのある黄金色にトロピカルフルーツの熟した風味に美しい酸と果実味がバランスよく感じられる辛口白ワインです。非常に珍しいヴージョの白ワインです。
  • おいしい飲み方 :
    大振りのブルゴーニュグラスに注ぎ、グラスの中でワインの変化を楽しんでいただきたいです。温度は10~12℃がおすすめです。
  • 合わせたい料理 :
    オマール海老ローストやアメリケーヌソース、かにの卵入りふかひれのスープなど。

Chambertin 2010 Domaine Rossignol-Trapet
シャンベルタン 2010 ドメーヌ・ロシニョール・トラペ

  • 産地 :
    ブルゴーニュ・コート・ド・ニュイ ジュヴレ・シャンベルタン村
  • 特徴 :
    澄んだ美しいルビーレッドに、華やかな香りから始まり、ほんのりと樽の香りが感じられます。徹底した有機農法から生まれたピノ・ノワールは旨みの凝縮した味わいにエレガントさえ感じられ、後味には程よい渋みが感じられます。
  • おいしい飲み方 :
    大振りのブルゴーニュグラスをご用意していただき、ワインの量を少なめにしてゆっくりと時間をかけて楽しんでいただきたいです。温度は14~17℃がおすすめです。
  • 合わせたい料理 :
    牛ホホ肉の赤ワイン煮込み、鴨胸肉のロースト フォン・ド・ヴォーソース、中華風 和牛のステーキやウズラ肉のレタス包みなど。

Château Boyd-Cantenac 1990
シャトー ボイド カントナック 1990

  • 産地 :
    ボルドー マルゴー村
  • 特徴 :
    1990年はあたり年と言われており、照り輝きのあるガーネットの色調が熟成を経てレンガ色になります。口当たりも優しくなり、旨みを感じ、渋みは溶け込んで滑らかでビロードのような舌触りです。
  • おいしい飲み方 :
    可能であれば、エアーレーションをして、十分に空気に触れさせて温度をあげて楽しんでいただきたいです。大振りのグラスが理想的です。温度は16~18℃がおすすめです。
  • 合わせたい料理 :
    牛フィレ肉の塩釜焼き 赤ワインソースなど。

地域ごとに魅力的なワインが数多く存在するワイン大国、フランス

フランスワインと一口には語れませんが、様々な地域と多様性にとんだブドウから造られるワインが存在するフランス。特別な日にはシャンパーニュで乾杯し、特別な白ワインや赤ワインを味わい、各地域のブドウの個性豊かなお手頃ワインを日常使いするなど、フランスワインの魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか。


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