のどを潤してくれる爽やかな飲み物といえば、ビール、シャンパーニュ、それともカクテルでしょうか。ぜひおすすめしたいのが「クレマン」です。聞きなれない方もいらっしゃるかと思いますので、「クレマン」の魅力について詳しくご紹介いたします。

ソムリエ:平原 誠次

8年間のフランス修行を経て入社。
ブルゴーニュワインや甘口ワインを得意とし、A.S.I. Sommelier Diploma(国際ソムリエ協会認定資格)を取得している。


クレマンとは

「シャンパーニュ」ほど知られていませんが、れっきとした由緒正しいフランス産スパークリングワイン(発泡性ワイン)のことです。
皆さんご存知の「シャンパーニュ」はフランス北部シャンパーニュ地方で伝統的に生産されたスパークリングワインですが、「クレマン」はシャンパーニュ地方以外で生産されるスパークリングワインを指します。シャンパーニュと同様の瓶内二次発酵はもとより、手作業による収穫、少量パレットでの運搬、および、150キロの果実に対し100リットルの搾汁制限、9ヵ月以上の瓶熟成義務など、AOC(フランスの原産地呼称統制法)により製法や規定が厳しく制限されているため、品質の高さはお墨付きです。フランス国内でも多く消費されていますが、生産量の32%はヨーロッパ、日本、オーストラリアに輸出されています。
シャンパーニュよりも瓶熟成期間が短いものが多いので、味わいはすっきり軽く、お値段も控えめで懐に優しいのが特徴です。

クレマンの歴史

発祥は2000年ほど前のローマ帝国時代にまで遡ります。フランス南部が「ボコンス」という国だった時期に、生産がうまくいかなかったワインを放置しておいたところ、翌年の春に発泡している液体が出来上がったことに由来すると言われています。

クレマンの味わい

フランスでは、シャンパーニュ地方を除くいくつかの地方で、クレマンの製造が法的に認められており、それぞれ使用できるブドウ品種や製法が異なっています。
以下に代表的なクレマンをご紹介します。

1.クレマン・ダルザス

フランス北東部のドイツ国境にあるアルザス・ロレーヌ地方で作られるクレマン。冷涼なこの地域でクレマン・ダルザスに使用されるブドウ品種は、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、ピノ・ノワール、リースリング、シャルドネ、そしてこの地方の土着品種のオーセロワです。味わいは気品があり爽やかな印象で、きりっとした酸が特徴。ロゼはピノ・ノワールのみで造られるため、フィネスに富んだクレマンが出来上がります。フランスで生産されるクレマンの中で、消費量が最も多いのがクレマン・ダルザスです。

2.クレマン・ド・ロワール

2000年もの歴史があるロワールでのワイン作りの中で、フランスで最も長いロワール川沿いにある一大ワイン生産地。フランス西部から東の大西洋へと流れる1,000キロものロワール川沿いは、そのテロワールから産出するワインの多様性で人々を魅了しています。
ロワール渓谷の冷涼な気候に合うブドウ品種は、シュナン・ブラン、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ピノ・ノワール、ピノ・ドニス、グロローといったロワールを代表する品種が並びます。アッサンブラージュによる生産が主ですが、シュナン・ブランを使ったクレマンが特筆すべきと言えます。石灰質が多い土壌によくマッチしたこの品種は、火打石やチョークといった、ミネラル豊かなアロマティック品種で、クレマンにもその特性が如実に表れています。

3.クレマン・ド・ボルドー

以前は「ボルドー・ムスー」と呼ばれていましたが、「クレマン・ド・ボルドー」に呼称変更されたのは1990年のことで、シャンパーニュと同じ製法で生産されています。この地域ではロゼのクレマンも生産可能ですが、全体からするとごく少数です。貴腐ワインで有名なセミヨンやソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルが白に使用され、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、マルベック、プティ・ヴェルドがロゼに使われます。出来上がるクレマンは豊かでふくよかな構成で、複雑味に富むのが特徴です。

4.クレマン・ド・ブルゴーニュ

いわずと知れた「黄金の丘」が広がるワイン銘醸地のブルゴーニュにもクレマンは存在しています。ピノ・ノワールやシャルドネはもちろんのこと、この地域で多く栽培されている補助品種のアリゴテやサシー、ボジョレーでおなじみのガメイなどが使用されます。冷涼で寒暖の差が大きいブルゴーニュのクレマンは、フルーティーで上品な酸によりバランスのよい味わいに仕上がります。

5.クレマン・ド・ジュラ

内陸にあるため、乾燥した大陸気候のジュラ地方は「酸膜発酵」で作る「ヴァンジョーヌ(黄ワイン)」が有名。シャルドネを主体として作られるクレマン・ド・ジュラは、ドライでエッジの利いたニュアンスを兼ね備えた辛口発泡ワインと言えます。

フランスで有名な「クレマン」以外のスパークリングワイン

1.クレレット・ド・ディー

フランスの南部、ローヌ地方の北部で生産されるクレレット・ド・ディーは、フランス国内で最も標高が高い所で生産されるワインです。クレレット100%で作られるこのスパークリングワインは、瓶内二次発酵をさせずに一次発酵のみで造る「田舎方式」と呼ばれる製法で造られるため、柔らかい口当たりのスパークリングワインです。

2.ブランケット・ド・リムー

温暖な地中海性気候のラングドック地方で生産されるブランケット・ド・リムーは、おそらくシャンパーニュよりも先に発泡性ワインを生み出したと言われており、モーザックと呼ばれる白ブドウを主としてアッサンブラージュが行われます。シュナン・ブランを主原料として作られる「クレマン・ド・リムー」とは異なりますので、混同しないようご注意を。泡の繊細さが特徴で、白い花やトーストのかぐわしい芳香で五感を愉しませてくれるスパークリングワインです。

クレマンと一緒に愉しみたい料理

軽快さが特徴なので、カルパッチョのような生の魚介類にヴィネグレットソースを利かせた料理に合います。芳醇なバターを使ったムニエルや、本来白ワインを使うフリカッセをクレマンに変えて、酸味を生かしたクリームソースとともに素材の味を活かした料理はいかがでしょうか。香りの強い食材よりも繊細なものと相性が良いので、仔牛や鶏肉、白身魚やフレッシュチーズなども相性が良さそうです。
暑い季節に飲む、よく冷えたクレマンは特に最高です。バーベキューとクレマンも、素晴らしい組み合わせと言えるでしょう。また、メルゲーズ(スパイシーなソーセージ)も、クレマンとともにそのひとときを引き立ててくれる一品です。

おすすめのクレマン

多様すぎて選ぶのに迷ってしまうクレマンの中から、おすすめしたいのはフランス東部のジュラ地方で生産される「クレマン・ド・ジュラ」ですが、その中でも小さなコミューンで生産される“Seyssel Mousseux”(セセル・ムスー)をおすすめします。
瓶内二次発酵で作られ、ジュラ地方の品種であるアルテス、モレット、シャスラから造られる辛口および半甘口スパークリングワインです。乾燥した大陸性気候の中で生まれるこのクレマンは、シャープで切れのよい酸味と細かい泡が特徴で、日本人の味覚にもきっと合うことでしょう。
半甘口はいちごをつぶしたような果実感と、低アルコールということもあって飲みやすいのが特徴です。

まとめ

一口にクレマンと言っても、多様な生産地やテロワールがあり、それぞれの味わいや愉しみ方も、独自性に富んだものです。
今日、シャンパーニュはその名が知れ渡った飲み物のひとつになりました。知名度で言えばまだまだといったクレマンではありますが、その味わいや多様性はシャンパーニュと同様に高い評価を得ています。懐にも優しいクレマンは、食卓をチャーミングに彩ってくれることでしょう。


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