私たち日本人にとって、エクレアはとても身近なお菓子です。コンビニやスーパーで日常のおやつにコーヒーとともに召し上がる方も多いのではないでしょうか。ケーキやパフェなどと違って、片手でつまめる手軽さも魅力的です。
こうした手軽なイメージのあるエクレアもフランスから伝わっています。意外に知られていない名称の由来やアレンジレシピなどから、エクレアという商品の魅力を紐解いていきましょう。

シェフパティシエ 中村 和史

1986年ホテルオークラ東京入社。
デリカテッセンに並ぶペストリーのほか、レストランやご宴会・ウエディングなど館内で提供される洋菓子全般を担当。
シェフパティシエ就任後は「伝統と革新」をテーマに、お客様に喜ばれる洋菓子を提供すべく、日々研鑽を重ねている。


エクレアの豆知識

エクレアの意味と起源

エクレアは19世紀初頭にフランスで生まれたお菓子です。フランスでの名称は「エクレール・オ・ショコラ」と言います。エクレア(エクレール)とは、フランス語で「電光」や「稲妻」という意味を持っています。エクレアの細長い割れ目やかかったチョコレートの形が稲妻に似ていることが、名称の由来という説があります。

コンビニやスーパーマーケットで購入できる、気軽で安価な家庭でのおやつから、専門店で販売されていたり結婚式でふるまわれたりするような高級なものまで、エクレアはさまざまなシーンで愛されています。
また、発祥の地であるフランスでは、シュークリーム以上に人気があり、どこでも食べられる国民のお菓子としてとても親しまれています。
日本でもエクレアは手軽なお菓子として浸透していますが、ここ数年フランスのエクレア専門店の日本への出店や催事の開催が相次いでおり、本格的なエクレアの人気が高まっています。

エクレアとシュークリームの違い

エクレアとよく似た洋菓子として真っ先に思い浮かぶのはシュークリームではないかと思います。
エクレアはシュークリームの一種として分類されており、生地は全く同じものが多いですが、その大きな違いは、形とチョコレートの有無です。
シュークリームはその名のとおりキャベツの様に丸い形をしていて中にクリームを詰めますが、エクレアは細長い形状をしています。そして、クリームを詰め、上からチョコレートをかけます。フォンダン(糖衣)をキャラメルやコーヒー、苺などのフルーツや抹茶など多岐にわたる色味や味わいの仕上げを行う場合もあります。
一方シュークリームは、シンプルな味わいが特徴というイメージが強いのではないでしょうか。

簡単にできるおいしいエクレアのレシピ

【エクレアの材料 *15㎝長程度で50本程度】

*シュー生地

・水…500g

・牛乳…500g

・薄力粉…300g

・強力粉…300g

・バター(無塩)…500g

・卵(Mサイズ)…20個

・塩…10g

・グラニュー糖…15g

【作り方】

1. 鍋に水・牛乳をとろ火にかけ、室温で戻しておいたバター・塩・砂糖を加え沸騰させます。
*沸騰してもバターが溶け切らずに残っていると、水分量が変ってしまうので、沸騰と同時に溶けきる事が理想です。

2. 沸騰したら火を止め、あらかじめふるいにかけて置いた強力粉と薄力粉を一度に加えて、ホイッパーで良く合わせます。

3. ダマが残らず混ざりきったら、再度火をつけ、しっかりと強火にかけます。

4. 火から下す目安は、鍋の底に生地が薄く膜をはった時です。その鍋のままでも良いのですが、ボウルなどに移しても構いません。

5. 卵を3~4回少しずつに分け、しっかりと混ぜ合わせます。

6. 生地が全体的に、艶やかにダマが残らないように整えます。

7. 6を鉄板に絞り出し、焼成します。
*焼成の際、完成前に開けてしまうと、膨らんだはずの生地が萎んでしまうので注意してください。

8. しっかりと膨らみ、焼き色がついて表面が割れたら完成です。

 

*カスタード

・牛乳…100g

・バニラビーンズ(またはペーストなど)適量

・卵黄…18g

・グラニュー糖…30g

・カスタードパウダー…10g

【作り方】

1. 鍋に牛乳を過熱しておきます。

2. ボウルに卵黄とグラニュー糖を合わせてしっかりと立て、そこにカスタードパウダーを入れて混ぜ合わせます。

3. 2に沸騰した牛乳を加え、鍋に戻して沸騰するまで炊き上げます(粉の種類により炊き上げ方は異なります)。

4. 表面にしっかりとフィルム(ラップ)をして、氷水などで素早く冷まします。

 

*チョコレートソース(上かけ用)

コーティングチョコレート(市販のもので可)

 

ホテルオークラ東京のエクレアは、私が入社した当時(33年前)から変わらず今の形をしています。チョコレートの温度、工程、仕上げ方法など細かな点にも注意が必要であり、技術を要する作業が多いスイーツです。
シュークリームと同じ生地配合ですが、焼成時間や温度などが異なり、テクニックが必要なスイーツです。

エクレアのシュー生地にチョコレートを上手に塗るコツ

チョコレートのトランペ(被覆作業)

チョコレートのトランペは、シュー生地にクリームを詰めてから行うため、持ち上げる際に注意をしないと折れてしまいます。
ホテルオークラ東京では、事前に仕込んでおいたガナッシュチョコレートとカスタードクリームを混ぜたクリームを絞りますので、クリームが締まり持ちやすくするため、冷蔵庫で一旦冷やします。
ゆっくりと丁寧に5本の指を巧みに使い持ち上げ、上下逆さにして、溶かしたチョコレートにそっと浸し、水平のまま、そっと持ち上げる事で、チョコレートがあまり垂れ落ちる事がなく、十分な量を付けることができ、綺麗に仕上がります。
チョコレートの温度は、人肌より少し高い程度がベストです。熱すぎると薄くかかってしまい、冷蔵庫でチョコレートにひびが入ってしまいます。
製菓厨房のように常に一定の低めの温度であれば、そのまましばらく置き、自然にチョコレートが固まり、艶も良く仕上がります。
チョコレートをかけてからすぐに冷蔵庫へ入れると、艶が出ない仕上りになってしまうため十分気をつける必要があります。

本格的にも手軽にも愉しめるエクレア

私たちにとって身近で広く親しまれているエクレア。手軽なイメージを持つエクレアですが、専門店での本格的なエクレアの魅力を味わったり、果物やドライフルーツをトッピングして違った味わいを愉しんだり、エクレア一つでもバリエーション豊かに愉しむ事ができます。
気が向いたときやパーティーのときに、エクレアの魅力を感じながらぜひ手に取ってお試しください。

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