チョコレートをメインの材料にした代表的なお菓子であるガトーショコラ。ふんわり、しっとりとした食感と濃厚な味わいが特徴で、老若男女問わず愛されている定番のお菓子です。

シェフパティシエ 中村 和史

1986年ホテルオークラ東京入社。
デリカテッセンに並ぶペストリーのほか、レストランやご宴会・ウエディングなど館内で提供される洋菓子全般を担当。
シェフパティシエ就任後は「伝統と革新」をテーマに、お客様に喜ばれる洋菓子を提供すべく、日々研鑽を重ねている。


ガトーショコラと主なチョコレート菓子との違い

ガトーショコラとは

ガトーショコラという名はフランス語で、直訳すると「焼いたチョコレート菓子」という意味になり、本来は焼いて作ったチョコレート菓子全般を指します。日本では、チョコレートを生地に混ぜ込んで焼いたケーキがガトーショコラと呼ばれています。焼いたチョコレート菓子の発祥は1700年代のフランスまで遡ります。日本では、1980年代に入ってから日本風のアレンジがされるようになり、現在日本で親しまれているガトーショコラが出来上がりました。フランスのガトーショコラは日本のものと比較すると、火をしっかりと通さずにレアで濃厚なチョコレートの風味をしっかりと愉しめるお菓子として親しまれています。日本では、一般的にチョコレート生地とメレンゲを混ぜて焼き上げるため、ふんわり、しっとりした食感と、濃厚でしっかりとした甘みのあるリッチな味わいが人気のチョコレート菓子です。

ガトーショコラとブラウニーの違い

ブラウニーもガトーショコラ同様、日本で人気のあるチョコレート菓子ですが、ブラウニーはアメリカ発祥のチョコレートケーキです。ガトーショコラは形状が様々であるのに対して、ブラウニーは四角い形をしたものがほとんどです。製法にも少し違いがあります。ガトーショコラは卵黄と卵白を別々に使用するのに対して、ブラウニーは全卵を使用し、すべての材料をシンプルに混ぜ合わせて作るため、ガトーショコラよりも手軽に作ることができます。また、ガトーショコラと比べてブラウニーの方がチョコレートの量が多く、口当たりがとてもしっとりとしています。その代わり、ブラウニーは生地にナッツやチョコチップを混ぜて焼き、粒のある食感を愉しめるようにしています。ガトーショコラがフォークでいただくケーキであるのに対して、ブラウニーは手でつまんでいただくことが多い、気軽なお菓子とも言えます。

ガトーショコラとザッハトルテの違い

ザッハトルテも世界的に人気があり、日本でも洋菓子店や喫茶店などでよく販売されています。発祥はオーストリアで、「チョコレートケーキの王様」とも呼ばれるほど、上質で濃厚なカカオの風味とアプリコットジャムの酸味がおいしいお菓子です。きめ細かく濃厚なチョコレート生地を焼いて、表面をココアパウダーやグラニュー糖(粉糖)、口どけの良いチョコレートでコーティングします。ガトーショコラと同じようにチョコレートを練り込んで焼き上げたスポンジ生地ですが、生地の配合が異なりますし、食感にもかなり違いがあります。焼き上げたチョコレート生地にアプリコットジャムをサンドし、ケーキの周りにもコーティングするように塗ります。さらに、砂糖と水を煮詰めたシロップにチョコレートを加えて作ったコーティングをまんべんなく掛けて仕上げます。ただし、ベテランのパティシエでもコーティング作業は難易度が高く、ガトーショコラと比較すると上級者向けの手の込んだケーキと言えます。

オークラのガトーショコラの作り方

【材料】

無塩バター…900g

グラニュー糖(A)…600g

卵黄…960g

チョコレート…1,200g(カカオ含有量50%から65%)

生クリーム…1,200g

薄力粉…360g

ココアパウダー…720g

卵白…1,700g

グラニュー糖(B) …1,250g

※配合は製菓厨房での基準値となるため目安として参考にお作りください。ご家庭で使用される型の大きさや器材等に合わせて調整してお愉しみください。

【作り方】

◇下準備◇

・チョコレートを湯煎で溶かし、なめらかな状態にしておく。

・バターを室温で柔らかく戻しておく。

・卵を卵黄と卵白に分けておく。

◇生地作り◇

・バターにグラニュー糖(A)を加えて白っぽくなるまでしっかりと混ぜ合わせる。

・少しずつ卵黄を加えて、なめらかになるまで混ぜる。

・湯煎で溶かしておいたチョコレートを40℃程度に温め、糸を引くようにして生地に加えながらしっかりと混ぜ合わせる。

・チョコレートがなめらかに混ざり終えたところに、七分立てしておいたクリームを加えてさっくりと混ぜ合わせる。

・卵白にグラニュー糖(B)を加えて固めのメレンゲを立てる。

・メレンゲを立てている間に、薄力粉とココアパウダーをふるいにかけておき、チョコレート生地に混ぜ合わせる。その後、メレンゲを数回に分けて混ぜ合わせる。

・混ぜた材料をメレンゲの泡を消さないように混ぜる。

◇生地を焼く◇

・直径12cmのデコ型の底面と側面に焼成紙を二重に当てておき、型に生地を流し入れる。

・型に少量のバターやサラダ油を塗ると紙が付き易くなります。

・生地を入れた型(1台に280g)の底を下から平手で数回トントンと叩いて生地の空気を抜く。

・生地を入れた型を、お湯を張った鉄板に置き、180℃に予熱したオーブンで60分程度湯煎焼きする。

・型の縁の高さ近くまで生地が膨らんだら焼き上がり。

・型ごと室温で冷まし、粗熱が取れたら型から抜いて完成。

おいしく仕上げるポイント

ガトーショコラはへこんでしまったり焼き縮みしてしまったりする場合があるため、上手に作るにはいくつかのポイントがあります。

生地を混ぜすぎない

生地を混ぜすぎてしまうと、チョコレートやバターの油脂の成分が卵やメレンゲの気泡を壊してしまいます。

生地の温度を保つ

チョコレートやバターは温度が低いと固くなり、流動性がなくなってしまうため、気泡がつぶれやすくなってしまいます。そのため、作っている最中の生地の温度を維持することが重要になります。温度が高すぎても材料が溶けてしまいますので、粉を入れるまでの温度は40℃を少し下回る程度が良いでしょう。

メレンゲをしっかりと泡立てる

油脂の多いチョコレートと混ぜて焼くので、卵黄、卵白ともにチョコレートに負けない強さを持たせることが重要です。卵黄、卵白ともに泡立て器でしっかりとホイップし、メレンゲの角が立つまでしっかりと泡立てることで、火の通りも良くなります。

ゆっくりと焼き上げる

湯煎でオーブン内の湿度を保つことと、全体をやさしく温めながら焼き上げるように気を遣うことが、おいしく焼き上げる最大のポイントです。失敗を少なくするコツは、大きな型で焼かないことです。直径12cm程度の型を使い、型の中の生地と湯煎のお湯の高さを同じくらいにして、ゆっくりと焼いてみてください。型の材質によっては、変形して焼ける事があるので注意してください。湯煎が難しい場合は、直焼きで構いませんが、焼き上がりは少し変わります。

焼き上がりを見分ける

焼き上がると、型の縁の高さに近付くほど生地が膨らみます。粗熱をとる際、膨らみがゆっくり落ちて元の高さにまで落ち着いたら、手のひらで生地を受け止めるようにしてひっくり返します。生地がゆっくりと型から剥がれて落ちてきますので、上から叩いたりする必要はありません。焼成紙が生地から自然に剥がれる焼き上がりが、ベストな状態です。焼成中は生地の膨らみ具合と表面の張りをよく観察し、焼き上がりを見分けてください。

焼き上げた後、蒸気を逃す

ガトーショコラを焼き上げた時、型の中には熱い空気が充満しています。熱い空気を外の冷たい空気と入れ替えないと、圧力の差により生地がへこんでしまいます。

家庭でも愉しめるガトーショコラ作り

300年ほど前にフランスで発祥したチョコレートの焼き菓子は、ブラウニーやザッハトルテなど、少しずつ形を変えながら世界中で親しまれてきました。そんなチョコレート菓子の代表でもあるガトーショコラを上手に焼き上げるには、いくつかのポイントがあることをご紹介しました。しかし、特別な道具や材料を使わないため、ご家庭でも十分に作ることができます。ふんわり、しっとりとした食感と、濃厚でリッチな味わいのガトーショコラをご家庭でもぜひ愉しんでみてください。

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