キルシュトルテとは?
風味豊かなドイツ菓子の特徴とおすすめレシピ
キルシュトルテといえば、ドイツの伝統的なチョコレートケーキとして有名です。1930年ごろのドイツが発祥とされていますが、今では世界中で愛されているチョコレートとさくらんぼのケーキです。
洋酒に漬けたさくらんぼの風味が口の中で広がり、とても味わい豊かなこのケーキの魅力をご紹介いたします。
シェフパティシエ 中村 和史
1986年ホテルオークラ東京入社。
デリカテッセンに並ぶペストリーのほか、レストランやご宴会・ウエディングなど館内で提供される洋菓子全般を担当。
シェフパティシエ就任後は「伝統と革新」をテーマに、お客様に喜ばれる洋菓子を提供すべく、日々研鑽を重ねている。
「黒い森のケーキ」キルシュトルテとは
キルシュトルテ(Kirschtorte)の名前の由来
キルシュトルテの正式名称はシュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテといいます。直訳するとSchwarzwälder =「黒い森」、Kirsch=「さくらんぼ」、torte=「ケーキ・お菓子」、となり、「黒い森のさくらんぼのケーキ」という意味です。ドイツ発祥のお菓子ですが、スイスやオーストリア、フランスでも作られています。ちなみに、フランスではガトー・ド・フォレノワールと呼ばれており、同様に「黒い森のさくらんぼ酒のケーキ」となります。
キルシュトルテの発祥
キルシュトルテが初めて作られたのは、今から100年近く前の1927年のことだと言われています。考案したのは、ドイツ西部のバート・ゴーデスベルクで菓子職人であったヨセフ・ケラーで、彼が働いていたカフェにはキルシュトルテのレシピが今でも残されているそうです。 ただし、発祥については諸説あり、地方によってレシピもさまざまです。例えば、スイスではチェリーを使用しないキルシュトルテも作られています。
キルシュトルテの特徴
キルシュトルテはチョコレートのスポンジ生地をベースに、蒸留酒を染み込ませた瓶詰さくらんぼを生地の間に挟み、生クリームでデコレートします。その上に、落ち葉に見立てて削ったチョコレートや、シュヴァルツヴァルト地方の特産品であるさくらんぼを飾り付けます。チョコレートの色がシュヴァルツヴァルト地方の森を表現しており、生クリームは森に積もった雪に見立てられていると言われています。
キルシュトルテの面白い特徴としては、あえてお皿の上に倒して盛りつけられる場合もあることです。これは、スポンジとクリームが非常に柔らかく作られているため、最初から倒しておかないととても食べづらいからです。
気軽に愉しめるキルシュトルテ
キルシュトルテはドイツを代表する伝統的なお菓子として広く親しまれています。日本で有名なドイツのお菓子と言えばバウムクーヘンですが、ドイツ国内ではバウムクーヘン以上に親しまれており、キルシュトルテが結婚式でふるまわれることもあります。ドイツに行けば、ほとんどのカフェでキルシュトルテをいただくことができますので、気軽に愉しめるケーキのひとつとも言えます。
生クリームがふんだんに使用されていますが、甘さ控えめで日本人の口に合いやすく、洋酒漬けのチェリーについても、味がくどかったりお酒の香りが強かったりして食べにくいということはありません。とても親しみやすく、場面を選ばずに愉しめるケーキです。
ホテルオークラ東京が作るキルシュトルテ (フォレノワール)
【材料】
チョコレートスポンジ…15cm焼成型約2台程度
グラニュー糖…220g
全卵…6個
水あめ…20g
薄力粉…180g
ココアパウダー…40g
ベーキングパウダー…1.2g
牛乳…70g
サラダ油…20g
サワーチェリー (缶詰)…適量
ホイップクリーム
チョコレートガナッシュクリーム
【下準備】
・サワーチェリーはキルシュを加えたシロップに漬けこんでおく。
【作り方】
1. 全卵とグラニュー糖、水あめを良く混ぜる。(湯煎などで人肌に温めながら立てるとより良い)
2. 薄力粉とココアパウダー、ベーキングパウダーをふるいにかけて置く。
3. しっかりと立ち上がった卵に、2の粉類をさっと入れて素早くかき混ぜる。
4. あらかじめ牛乳を40℃程度まで温めておき、サラダ油を加え、粉類を合わせた生地に入れて混ぜ合わせる。
5. オーブンを180℃に設定しておき、25分程度焼成する。
6. チョコレートスポンジが冷めてから、4枚に切り最下段には、あらかじめ別に作って置いたチョコレートガナッシュクリームをサンドし、2段目3段目にはサワーチェリーとホイップクリームをサンドした合計7層にする。
チョコレートスポンジにはそれぞれ、サワーチェリーを漬けておいたシロップを適量アンビベする。
7. サンドしたスポンジにホイップクリームをナッペして、一面に削ったチョコレートをまぶして、粉砂糖を振る。
ホテルオークラ東京とキルシュトルテ
ホテルオークラ東京でキルシュトルテと言うと、レシピでもご紹介したチョコレートスポンジを用いたケーキとは異なる物でした。パートダマンドをベースにしたビスキュイで薄く焼き上げた物に、サワーチェリーとアーモンドプラリネを振りかけクリームをサンドした4層からなるケーキでした。
キルシュトルテ(フォレノワール)は、人気があり、時々特別注文としてお作りしていました。
まだ入社間もない頃の私は、キルシュトルテとフォレノワールがドイツ語とフランス語の名前の違いこそ判らず、全く別の商品と思っていました。
これまで、ホテルオークラ東京では多くの国の料理フェアが行われてきましたが、その歴史の中からこうした多様なケーキのバリエーションが生まれたのではと思います。世界各国からフェアに参加したシェフのエッセンスが、当時のパティシエたちに取り入れられ、今もなお受け継がれているのです。そうした機会のたびに多くのパティシエが知識を深め、アレンジを加え、ホテルオークラ東京独自のケーキへと進化していったのではないでしょうか。