セカンドワインというと、「セカンドハウス」や「セカンドカー」というように、主となるものと比較して二次的副産物のように捕らえられがちですが、そのような意味を持つ点と、そうではない点があります。その違いやファーストワインとの関連性について詳しくご紹介します。

ソムリエ:平原 誠次

8年間のフランス修行を経て入社。
ブルゴーニュワインや甘口ワインを得意とし、A.S.I. Sommelier Diploma(国際ソムリエ協会認定資格)を取得している。


セカンドワインとは

セカンドワインとは、シャトーの冠を掲げたファーストラベルとするには難があるワインということであり、それ以外は問題が無いものなので高品質なワインといえるでしょう。ファーストラベルではないので価格も抑えられますし、シャトー(ワイン生産者)の作り出すワインのニュアンスも少なからず表現されているワインといえます。このように、セカンドワインは高品質であるものの、手頃な価格のものが多く、気軽にフランスワインを愉しみたい方にはおすすめです。

「セカンドワイン」という呼び方は、世界屈指のワイン名産地であるフランス ボルドー地方で使われる呼称で、シャトーのフラッグシップとなるトップキュヴェではないワインに対して使われます。セカンドワインとは、一般的に樹齢の若い区画のブドウや、ファーストラベルの選果に堪えられなかったブドウを使ったワインのことを指しますが、近年ではセカンドワインの需要の高まりにより、セカンドワイン用に畑を購入する生産者も増えてきています。エチケット(ラベル)上には「セカンド」等の表記はされませんが、名称やエチケットのデザインがトップキュヴェのそれに酷似したものが多くあります。

「ファーストラベル」とはそのシャトーの代表作であり、シャトー名をつけるにふさわしい、最上のブドウ、最適の醸造、最高の気遣いを施されたワインのこと。数多くあるシャトーの中から、選りすぐりのシャトーだけを格付けしたメドックの格付けは世界的に有名です。メドックの格付けは第一級から第五級まであり、5つある第一級シャトーは「五大シャトー」と呼ばれています。ポイヤック村のシャトー・ラフィット・ロスシルド、シャトー・ラトゥール、シャトー・ムートン・ロスシルド、マルゴー村のシャトー・マルゴー、そしてぺサック・レオニャンのシャトー・オー・ブリオンです。

ボルドーにおけるシャトーの平均所有耕作面積は50ha前後で、樹齢の若い苗や古いものをバランスよく植えています。樹齢の若い樹からできるブドウから造られるワインは、品質が整っていなかったり、青みが強かったりするものも多く、古い樹齢のブドウから作られるワインとのアッサンブラージュ(調合)が不可欠となります。そのため、シャトーの顔ともいえる、ファーストラベルのワインには平均樹齢30~50年以上の比較的品質の安定した果汁を使わなければ、そのシャトーの「顔」としては不十分になります。

セカンドワインの人気の秘密

セカンドワインはボルドーのすべてのシャトーが作っているわけではなく、一部の限られたシャトーのみで生産されています。
セカンドワインを生産するシャトーの中には、メドックの格付けに入っているシャトーが多く、他のシャトーに比べるとブランドがすでに構築されていて、消費者に認知されているケースが多いのです。それらのシャトーはワインを生産する上での「人、モノ、金」が整っていることが多く、ブドウは比較的丁寧に栽培されています。ファーストラベルの「最終面接」のお眼鏡にかなわなかったワインでもファーストラベルと同様の畑、製法で作られているため、ポテンシャルが高く、トップキュヴェの世界観を愉しめる信頼性があるワインといえます。また、価格もファーストラベルに比べると手頃な価格が多く、お買い得である点も人気の理由でしょう。これらの理由からセカンドワインは求める価値があるワインといえます。

ファーストラベルはもともと長期熟成を前提にしたものが多いため、飲み頃を検討する必要があるのに対し、セカンドワインは比較的早い段階でもファーストラベルの世界観を愉しめます。
シャトーによってはセカンドワインに続く第三のワイン「サードワイン」を生産している場合もあります。たとえばシャトー・ラトゥールはサードワインとして「ポイヤック」を1989年より生産しており、セカンドワインの「レ・フォール・ド・ラトゥール」として選抜されなかった若い畑のブドウや、ボルドー左岸の補助品種として使われるメルローを多く配合しているのが特徴です。アペラシオンは「ACポイヤック」なのでポイヤック村産のブドウであれば格付け上は問題なく、あのシャトー・ラトゥールが栽培するブドウなので、品質は保証されているといっても過言ではありません。

オークラのセカンドワイン

オークラでは“Amiral de Beychevelle”(アミラル・ド・ベイシュヴェル)と”Carruades de Lafite”(カリュアド・ド・ラフィット)という二つのセカンドワインを取り扱っています。

前者はメドックのサン・ジュリアン村のうち、格付け第三級の“Château Beychevelle”(シャトー・ベイシュヴェル)のセカンドワインです。ちなみに、このシャトーは“Les Brulieres de Beychevelle”(レ・ブリュリエール・ド・ベイシュヴェル)という他のワインも生産していますが、こちらの格付けは「オー・メドック」なので、メドックの格付けよりは下になります。このため、いわゆる「サードワイン」と呼ばれることもあります。

後者はポイヤック村の第一級格付けChâteau Lafite Rothschild(シャトー・ラフィット・ロスシルド)のセカンドワインで、格付けは同様の「ポイヤック」なので、同じ出身の「兄と弟」といえるでしょう。

おすすめのセカンドワイン

【パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー】
【マルゴー・デュ・シャトー・マルゴー】

とある小説でも有名になった、あのメドック格付け第一級シャトー・マルゴーのセカンドワインとサードワインです。パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴーはファーストラベルに比べてメルローの比率が高く、滑らかな口当たりが特徴です。
マルゴー・デュ・シャトー・マルゴーはファーストラベルやセカンドワインになりえなかったワインが使われますが、マルゴーの甘美なスタイルは十二分に受け継いでいます。

【クラレンス・ド・オー・ブリオン】

クラレンス・ド・オー・ブリオンは、ファーストラベルと全く同じ畑で収穫された若樹のブドウを使っており、ファーストラベルと同じ土壌や品質管理のおかげで安価で早熟なのがこのワインの魅力です。
料理と合わせるなら、赤ワインをふんだんに使ったボルドーの郷土料理「鰻のマトロット」はいかがでしょうか。鰻をさばき、香味野菜とともに加熱して、お好きな赤ワインとともにコトコト煮ること30分。ワインがすすむスタミナ料理の出来あがりです。ぜひ一度お試しください。

まとめ

昨今、世界中でワイン人気のため価格が高騰し、ワイン生産伝統国であるフランスも例外ではありません。20年前に1万円程度で購入できたワインが、今ではその数倍以上の価格に上がっていることも珍しくなく、単なる嗜好品ではなくなっています。
その中でも品質が安定している優良シャトーのワインは特に価格が上がっているため、手を出しにくいのが現状です。日頃召しあがるワインだけではなく、ここぞというときに信頼と安定感のあるワインとして、セカンドワインもしくはサードワインも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。


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